水晶の舟 / ライブ評



THE NOISE BIRDS『The Dark Sea Hides A Bright Light』
(2020年4月3日)






東京のサイケデリック・ロック・バンドである水晶の舟の紅ぴらこ(g)と影男(g)が、CHARNEL MUSICを主宰して日本のアーティストの音源も90年代初頭から多数出してきたメイソン・ジョーンズ(g)や、メイソンとNUMINOUS EYEをやっているマイク・シャウン(ds)と作ったアルバム。メイソンらの拠点のサンフランシスコで一昨年5月にレコーディングを行ない、ロンドンのレーベルからリリースされている。


A面1曲目が「When the Light Showers Down it Gives us a Sign (10:03)」、
A面2曲目が「Beyond the Ocean, Flying In the Sky (11:00)」、
B.面が「A Dance Loved by a Lost Friend (20:55)」
という構成。


インプロヴィゼイションとのことだが、あらかじめ作られていた曲のようにフック十分の演奏である。長尺のインスト3曲入りながらまったく長さを感じさせず、曲名どおりのイメージが広がる至福の作品だ。


僕が聴いた限りここ数年の間にプレスされたレコードは音がデッドな状態のものが多いが、こんなにダイナミック・レンジの広いLPは久々だ。レコードならではの音像のナチュラルな奥行と広がりや、ひとつひとつの音の彫りの深さと質感の柔らかさに惚れ惚れする。


うっすらしたきらめきのオープニングから光が射し込むが、木漏れ日と呼ぶには強い響きでゆっくりと4人が命を紡いでいくかのようであり、1曲目は胎動にも聞こえる。2曲目もゆったりと進みつつゆっくりと加速し、たゆたいながら熾烈なギターが重なり合いつつ漏れるメロディがやさしい表情をたたえ、さりげなくグルーヴも醸し出されている。レコードのB面のすべてを使ったラスト・ナンバーは、たおやかな“歌”を3本のエレクトリック・ギターとドラムが編んでいき、心に残るメロディがおくゆかしく滲み出し、ベース・ギターを使ってなくても程良い音圧のサウンドのヴォリューム感にも持っていかれる。


聴いているうちに濃厚なリアル・サイケデリック感覚に覆われていくレコードだが、黒のアートワークとは裏腹に昼間も似合うアルバムだ。

大スイセン。





(行川和彦氏/音楽ライター)




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